就職活動について思うこと

就職活動について、最近大学院の後輩と話す機会がありました。僕自身2年ちょっとの社会人経験しかなく、視野は非常に狭いですが、批判も覚悟の上で、就職活動に必要だと思う観点を何点か述べてみたいと思います。


○ 自分がより高く評価されている企業に行く。
これは意外と見落とされがちな視点ですが、大事なポイントだと思います。例えば僕の周囲を見渡すと、大学院の同期はもっぱら外資系コンサルや外資投資銀行、総合商社等に進みました。大学の学科の同期はデベロッパーや建設会社、役所、総合商社、コンサル等に進みました。そうした友人たちを見渡すと、その会社に高い位置で入社した(と思われる)人は、入ってからも面白い部署やポストにつけさせてもらっている印象があります。異動をする際も、自分の行きたい部署への異動希望を叶えてくれる可能性がより高くなるはずです。
例えば総合商社業界でトップの企業にボーダーぎりぎりで入社するのと、5位の企業にトップで入社するのでは、後者の方が、社内でプライオリティの高い面白い仕事に関われるかもしれません。総合商社であれば、1位でも5位でも、やれる仕事内容に大きな違いはないはずです。営業がやりたくて総合商社に入ったものの、希望が叶わずずっとバックオフィスにいなくてはならない、という状況になったとしたら、それは辛いことだと思います。
僕自身の体験を言うと、ちょうど今から3年前、学部時代からずっと行きたいと思っていた総合商社と、今の役所とで進路を悩みました。総合商社の方は、今思えばボーダーぎりぎりで内定をもらったように感じるし(実際内定の連絡が来るのが優秀な同期より遅かった)、同期のキャラクターも皆営業向けで社交性の抜群に高い人が多い中、僕はそこまでその輪に入りこむことができませんでした。一方、今の役所はありのままの姿の僕を受け入れてくれて、自然体で面接にも臨むことができ、そういう自分を高く評価してくれたように感じました。もし総合商社に自分を無理に納得させて入社していたとしたら、今頃どういうキャリアを歩んでいたかは分かりません。でも、きっと今の役所でやらせてもらっている仕事ほど、楽しく仕事をすることはできなかったかもしれません。(こればっかりは仮定の話なので分かりませんが・・・)
とりあえず、ここで言いたかったのは、自分をより必要としてくれる企業に入社するという視点が重要ではないかということです。


○ なるべく多くの進路を検討する。
僕は学部時代と大学院時代で二回就活をしました。学部時代は上手くいきませんでしたが、それでも総合商社やデベロッパー等幅広く企業を見ることができました。大学院でも総合商社や役所、金融機関、コンサル、メーカー等幅広くOB訪問や企業訪問をしました。それぞれの長所や短所を比較検討した結果、最終的には自分が一番面白いと思うフィールドを見つけることができたと思っています。
就職活動を控えている学生と話すと、どうも外資系コンサルや外資系金融等、いわゆる就職偏差値の高い、学生間で難関と言われているところに絞って就職活動をしている人が多いように感じました。世の中にはもっと面白い進路がたくさんあるはずです。社会起業のような形で起業するのも面白いし、NPONGOで働くのも面白いし、保険会社でクオンツのような仕事をするのも面白いし、博士課程まで進んで学問を究めるのも面白いと思います。
手前味噌になりますが、その魅力が十分に学生に理解されていないのが政府系の仕事だと思います。政府系の仕事には、社会的インパクトが大きく、クリエイティビティの塊のような仕事がたくさん眠っています。予算や法律、税制等、政策を作る過程はまさに創造性の塊ですし、常に新しいアイディアを出すことが求められています。資源外交や気候変動交渉等、日本を代表して国際交渉を行うのも、知的にエキサイティングな仕事だと思います。自分のした仕事が世の中に与える影響は大きく、責任とやりがいを伴います。その魅力と比べて優秀な学生の志望者はあまり多くなく、年々減ってきているため、若いうちからある程度大きな裁量を持たせてもらえます。もちろん政府の仕事への関わり方は様々あって、役所に入って当事者として政治のプロセスも含め政策を作り上げていくのも一つですし、JBICDBJに入って金融の観点から政策に関わるのも一つですし、シンクタンクに入ってアカデミックな観点から政策の分析・提案を行うのも一つです。
以上のように、特定の業種に初めから絞り込むことなく、もっと視野を広げて、様々な進路の可能性を考えることは、最終的に自分の決めた進路に納得するためにも必要なプロセスだと思います。


外資系企業の良さと悪さを知る。
就職活動生と話していて知りましたが、外資系企業の人気はいまだに非常に高いようです。外資系企業には魅力があるのは事実で、僕自身も就職したいという憧れを持った時期がありました。特に、若いうちからグローバルな環境で働けること、能力主義の人事で若いうちから活躍できること、給与が高いこと等が魅力でした。一方、負の側面もあることを忘れてはならないと思います。日本で外資系企業に就職することになった場合、働く会社はあくまで海外にある本社の支社という位置づけになると思います。よって、その経営は本社の意向に大きく左右され、本社が日本支社を撤退させる、あるいは縮小させるという判断を下した場合、その決定には従わざるを得ないでしょう。また、初めに外資系企業の支社に入ってから、本社の中枢部や経営層に入り込むのには、相当な努力と覚悟が必要だと思います。
もちろん、外資系企業への入社をあくまで長期的なキャリアのうちの一つのステップとして捉え、その後やりたい方向性が明確に定まっている、あるいは支社にとどまらず将来的に本社に転籍し、活躍する覚悟・自信があるというのであれば良いと思います。ただ、そうした覚悟・自信も、将来の方向性もないまま、成長できそうだから、給与が高いから、といったふわっとした理由で入社するのは危険だと思います。
例えば金融であれば、海外の本社の意向に左右されやすい外資系の金融機関に入社するよりは、経営基盤が安定している日本のメガバンクに入って、海外勤務も含めて長期的にじっくりと金融という仕事に携わる方が、キャリアを通じて面白い仕事ができるかもしれません。あくまで個人的な印象ですが、周囲の友人を見ていると、日本のメガバンクの方が外資系の金融機関よりも、国内営業や海外勤務、留学等、長期的な視点でしっかりと人材を育成している印象があります。
長くなりましたが、ここで言いたかったのは盲目的に「外資系企業>>日系企業」という構図を信じるのではなく、そのメリット・デメリットを比較した上で進路を決めるのがいいのではないかということです。