イノベーション・オブ・ライフ

イノベーション・オブ・ライフを読んだので、記録を残しておきたいと思います。

経営学の理論を、家族や友人との人間関係といった人生に役立てることが本書の目的。


1.幸せなキャリアを歩む

  • 人に本心から何かをしたいと思わせること(動機づけ要因)に着目する必要がある。それは、やりがいのある仕事、他者による評価、責任、自己成長といったものである。報酬は、それがなければ不満につながるという「衛生要因」に過ぎない。
  • 本当の幸せを見つける秘訣は、自分にとって有意義だと思える機会を常に求め続けることにある。つまり、新しいことを学び、成功を重ね、ますます多くの責任を引き受けることの機会である。
  • 予期された機会(意図的戦略)と予期されない機会(創発的戦略)の2つの選択肢を意識しながらキャリアを作っていく。
  • 限られた資源(時間、お金、労力)を何に費やすかを考える必要がある。達成動機の高い人たちは、いますぐ目に見える成果を生む活動(キャリア)に無意識のうちに資源を配分してしまうという危険に陥りやすい。


2.幸せな関係を築く

  • 人生のなかの家族という領域に資源を投資した方が、長い目で見ればはるかに大きな見返りが得られる
  • 将来への投資を怠った企業が受ける報いは、我々の身にもふりかかる。家族や親しい友人との関係は、人生のもっとも大きな幸せのよりどころの一つ。大切な人との関係に実りをもたらすには、それが必要になるずっと前から投資をするしか方法はない
  • 幸せを求めることは、幸せにしてあげたいと思える人、自分を犠牲にしてでも幸せにしてあげる価値があると思える人を探すこと。
  • 犠牲が献身を深める。(=相手のために価値あるものを犠牲にすることでこそ、相手への献身が一層深まる。)
  • 「この仕事はわたしが将来立ち向かう必要のある経験をさせてくれるだろうか」という視点が重要。親の役目は、将来子供にとって必要となる経験をさせてあげること。
  • 家庭内の文化を定めるため、親は常に一貫した態度をとり、子供の正しい行いを励ますことが必要。


3.罪人にならない

  • 我々は小さな決定を日々迫られ、こうした決定が驚くほど大きな問題に発展することがある。「この一度だけ」という考えで一度過ちを犯すと、それ以降もやり続けてしまう。
  • 人生の目的を理解することが重要である。

クリステンセン教授は「イノベーションのジレンマ」等の著作で有名なハーバード・ビジネス・スクールの教授です。私も大学院時代、イノベーションのジレンマを読んだことがあります。大企業が短期的に利益の大きい既存事業に投資を集中させるあまり、中長期的に市場を席巻することになる新技術や新製品への投資を怠り、最後には新興企業に駆逐されてしまうという理論です。著者は、この理論を我々の人生に適用しています。つまり、人生において、我々も短期的に達成感の得られる目の前のキャリアを追求するあまり、長期的に大事にしなくてはならないが一見優先度の低い家族や友人との人間関係に十分な投資をせず、人生の終盤に気づいたときには手遅れになっている、ということを言いたかったのだと思います。
本書自体は、ところどころやや強引に経営学の理論を私的生活に結び付けているような印象を受けましたが、考えさせられる面も多く、非常に面白かったです。個人的に一番考えさせられたのは、「幸せな関係を築く」の部でした。「大切な人との関係に実りをもたらすには、それが必要になるずっと前から投資をするしか方法はない」という部分は、耳が痛かったです。私自身、社会人になってから3年9か月が経ちますが、幸い面白い仕事に恵まれ、没頭することができました。その分、大切な友人や家族との時間を十分にとってきたかというと、自信を持って答えられません。今後は、自分の時間の使い方を変えて、大切な人と過ごす時間を大事にしていきたいと思いました。