留学するとしたら

12月上旬に年に一度の大きな国際会議が終わるまでは土日も含めバタバタと過ごしていましたが、会議終了後から年末にかけては、比較的ゆったりとした日々を過ごすことができました。国際会議においては、英語で言いたいことの半分も言えない自分自身の未熟さを改めて痛感するとともに、国際交渉というフィールドの面白さ、やりがいの大きさを強く感じました。また、自分自身が行政官として英語力・交渉力といった能力を高めることが、国への貢献に直接つながる分野だと感じました。そうした経験もあって、入省前からぼんやりと希望していた海外留学について、より強く明確な目的意識を持って行きたいと思うようになりました。最近は時間が割とあったので、まだ留学に行かせてもらえると決まったわけでもなんでもないのですが、仮に留学に行かせてもらえることになったとした場合、どういう2年間を過ごすのがよいかを考えています。


まず、どこで勉強するかが重要です。アメリカやイギリス、フランス、中国、シンガポールあたりが候補になります。それぞれメリット・デメリットがあるのは言うまでもないですが、僕自身はやはりアメリカに一番関心があります。中国をはじめとする新興国の重要性が増していることは言うまでもありませんが、とはいえ、僕個人の意見としては、今後しばらくはアメリカが経済的・政治的に力を持ち続け、日本にとって(特に安全保障面において)最も重要なパートナーであり続けると考えています。また、世界の超一流の学生(ベスト&ブライテスト)は依然としてアメリカのトップスクールに集まってくるのだと思います。将来的に大使館等を通じて新興国で働きたいとも思っていますが、働き始めてから最初の海外経験としては、まずはアメリカの社会・文化・価値観に2年間どっぷりと浸かって、世界から集結する一流の学生に揉まれながら勉強するのがいいのではないかと考えています。


次に、何を勉強するかについても多くの選択肢があります。経営学修士MBA)や行政学・公共政策学修士MPA・MPP)、経済学修士、法学修士(LLM、ただし法学士を持っていないと受けられない)などが候補となります。どの学位も魅力的ですが、今のところ、MPA・MPPに最も関心があります。理由の一つ目は、僕自身が大学・大学院と工学系のバックグラウンドを持っていて、政治・経済について体系的に勉強したことがないからです。僕が調べた限りは、多くのMPA・MPPの学位で、ミクロ・マクロ経済、国際政治、国際法などをバランスよく学べることができるようです。二つ目は、ビジネスマン・起業家らとは違った視点・考え方を提供することが行政官としての付加価値につながると考えるからです。MBAは最も難関な学位の一つですし、世界から極めて優秀な人材が集まるとも聞いていて、正直魅力的に映ります。また、僕の所属する役所では民間企業の競争環境整備や産業の競争力強化が政策の中心となるので、MBAでビジネスの仕組み・民間企業の行動原理を勉強することは間違いなく役に立つと思います。ただ、僕自身は、経営学の基礎は大学院(技術経営を専攻)である程度勉強しましたし、MBA経営学を更に追及するよりも、自分にとっては未知の世界である国際政治や経済、外交といった分野に挑戦し視野を広げる方が、行政官としての付加価値を高められるのではないかと考えています。


最後に、どの学校で勉強するかという問題が残ります。一つの重要な判断材料として、大規模なスクールか、小規模なスクールかという基準があります。それぞれメリット・デメリットがあると思いますが、大規模なスクール、例えばハーバードの行政大学院(ケネディスクール)やコロンビアの国際関係大学院(SIPA)のようなところで勉強すれば、一学年数百人という規模ですので、卒業生ネットワークも含め、将来政策を作る際や国際交渉を行う上で役立つ幅広い人的ネットワークができるという利点があると思います。現に、ニュースを見ていても、ハーバード・ケネディスクールを卒業した政治家が国内外問わず多く出てきているように感じます。他方、小規模なスクール、例えばプリンストンウッドロー・ウィルソンスクールやジョージタウンの外交大学院のようなところで勉強すれば、一学年百人以下という規模なので、教授や他の学生たちと密にコミュニケーションが取れ、アメリカという文化にどっぷり浸かることができると思います。授業も当然少人数になるので、常に高い緊張感を維持して勉強することができると思いますし、英語力も否が応でも向上させられるのではないかと思います。個人的には、自分の能力不足を克服したいという想いの方が強いので、小規模なスクールでインテンシブに勉強する方が魅力的に映ります。


いずれにせよ、まだ留学に行けるかどうかも決まっていませんが、どこに留学に行くことになったとしても、帰国後にいかに公務に活かすか、行政官として高い付加価値を出せるかという視点が大事だと考えているので、その点を忘れないようにしたいと思います。


追記(1月1日):
何を勉強するかについて、ある人から有益なアドバイスを受けました。まず、MBAMPA・MPPでは、実際にはカリキュラムの多くが重複している(例:経済、金融、統計)とのこと。むしろ2つのプログラムの最大の違いは集まる学生の種類であって、MBAに集まる学生の大半は世界各国のビジネスマンで、逆にMPA・MPPに集まる学生の大半は世界各国の政府関係者であるとのことでした。そのため、帰国後もパブリックの分野でキャリアを歩むつもりならば、世界各国の政府関係者とネットワークが築けるMPA・MPPの方が望ましいのではないかとのことでした。また、ハーバード大やコロンビア大のようにMBAMPA・MPPの両方が置いてある大学では、ある程度自由に互いの授業を取れるため、その点を考慮しても、留学後のキャリアのためにどんなネットワークを築きたいか、どんな人たちに囲まれて勉強したいかを選定の基準にした方がいいとのアドバイスには納得がいきました。