フランス大統領選について

3月31日号のEconomist誌のLeadersのトップに、フランス大統領選とフランスの経済状況に関する記事がありました。面白い内容だったので、少し紹介します。
記事は、フランスは経済状況が非常に悪化しているにも関わらず、どの政治家もその事実を無視し、真剣に取り組もうとしていないことを指摘しています。(事実、フランスの経済は財政赤字GDPの90%であり、公的支出もGDPの56%とユーロ圏で最大、また経常収支もユーロ圏で最も大きい数字となっています。)一方、記事によれば、フランスとは対照的に、ユーロ圏内の国々は、イタリアもスペインもギリシャも改革に向けた取り組みを積極的に行っています。
そんな中、4月22日にフランス大統領選が行われます。右寄りの現政権のサルコジ大統領が再選するか、左寄りの社会党のオランド候補が当選するか、世界的に注目がされていますが、本記事では、どちらが大統領に選ばれようとも、投資マネーはフランスの国債市場から逃避するだろうと、かなり悲観的な見方をしています。具体的には、オランド候補は6万人の教師職の新設、富裕層に対する75%の所得税の課税、年金の受給年齢を現在の62歳から60歳への引き下げるといった政策を掲げていますが、これはフランスの財政状況を悪化させ、富裕層をフランス国外へ逃避させることにつながりますし、サルコジが再選されても、フランスの財政支出を抑制する大胆な改革に着手することはできないとしています。


個人的には、フランス大統領選の結果は、日本にも大きな影響を与えるだろうと考えています。1点目は経済・金融市場への影響です。大統領選の結果を投資家がネガティブにとらえ、その結果ユーロ圏で第2位の経済大国であるフランスの金融市場から投資マネーが逃避し、フランス国債の利回りが上昇するようなことがあれば、一旦沈静化したと思われたユーロ危機が再燃しかねません。そうした事態に陥れば、ユーロ圏への経済依存度の強い中国等はもちろんのこと、当然日本にも大きな影響を与えると思います。
2点目はエネルギー政策への影響です。サルコジ大統領は原子力に対して前向きですが、オランド候補は電力の原子力依存率を現在の75%から50%に引き下げることを明言しています。日本は今後の中長期的な新しいエネルギー計画を策定している最中ですので、世界でも有数の原子力大国であるフランスが原子力政策を転換した場合、日本の計画策定にも大きな影響を与えると考えています。
引き続き、フランス大統領選の行方には注目していきたいと思います。