8月20日号 GoogleのMotorola Mobility買収について

今日のEconomist勉強会では、GoogleMotorola Mobililty買収について発表をした。話題は、Google経営判断についてから、イノベーションを促進するための特許制度のあり方にまで及んだ。

Intellectual property –Patent medicine-


・8月15日にGoogleMotorola Mobilityの買収を発表。Googleの最大の買収で、従業員数はほとんど2倍になる。Googleの買収の目的は、Motorolaの17,000もの特許と、7,500のパイプライン(申請中の特許)にあると言われている。
・特許の基本的考えは優れている。発明者は、技術の内容を公表することの見返りとして、限定的な独占を認められる(アメリカの場合20年間)。高度技術は広く利用可能となり、それが更なるイノベーションを促す。
・しかし、近年、特許システムはイノベーションを促すよりも抑制してきている。アメリカの公開企業(製薬企業を除く)の特許による総利益は40憶ドルであるのに対し、関連する訴訟コストは140憶ドルである。グーグルは以前は特許に対して懐疑的であったが、近年はスマートフォンに関するややこしい訴訟に巻き込まれており、交渉力を強化するためにもモトローラの膨大なポートフォリオを獲得したい意向。
・特許システムがイノベーションを抑制している原因は、特許の質よりも量を評価すること、ソフトウェアやビジネス手法の分野における怪しい特許の増加、パテントトロール(※)の増加が原因である。
・特許改革の法律が成立しようとしているが、内容は弱いものであり、より大胆な3つの改革が必要である。①イノベーションが速く起こり、比較的安い分野の特許(コンピュータなど)は、そうでない分野(製薬など)より短い満期にするべきである。②ソフトウェアやビジネス手法に関する特許を獲得する障害をもっと高くするべきである。③特許ポートフォリオの所有に関する公開要求をより強くし、特許訴訟を専門的な裁判官によって行うべきである。


パテントトロール特許権保有し、その権利行使によって、大企業などからライセンス料や損害賠償金を獲得しようとする企業、組織、個人
出典:IT用語辞典バイナリ パテントトロールとは (patent troll): - IT用語辞典バイナリ


本日の勉強会での議論も踏まえ、感想を述べておきたい。
まず、Google経営判断について。GoogleがMotolora Mobilityを買収した意義は、2点あるのではないかと思う。1点目は、アップルやマイクロソフトGoogleに対して知的財産への侵害を訴える等、訴訟紛争が頻繁に起こっているスマートフォン産業において、Motolora Mobilityの特許を取得することで訴訟紛争に対する防衛策を講じられる点。2点目は、ユーザーインターフェースからプロセッサーまで高い擦り合わせ力が必要とされるスマートフォン産業において、Motolora Mobilityの端末事業を買収することで、垂直統合度を高めることができる点。というのも、AppleはCPUからハードの組み立て、OSからアプリケーションソフトまで、バリューチェーンのほぼ全てを自社で統合していることが強みであり、それが優れた商品力につながっていると言われているからだ。
次に、イノベーションを促進する特許制度のあり方について。記事では、パテントトロールの存在や競合企業間での激しい特許紛争によって、本来イノベーションを促すための特許制度がそれを阻む制度になっているのではないかという指摘があった。その解決策として個人的に面白いと思ったのは、コンピュータや電子機器のような比較的イノベーションが速く起こる分野については特許権の保護期間を短くし、一方、製薬のようなイノベーションが起こりづらく投資回収に長期の期間を要する分野については特許権の保護期間を長くするという提案。現行の制度では、特許権の保護期間は分野によらず20年になっていたと思う。産業分野の特性に合わせたメリハリのある特許制度は、日本でも検討に値するのではないかと感じた。