海外研修2009その1

昨年に引き続き、今年も9月23日から9月27日まで、アメリカ・サンフランシスコに研修旅行に行ってきました!(昨年の研修旅行:http://d.hatena.ne.jp/fukudakitchou/20081012/1223770755
今年はTAとしてM1の学生の引率という形で随行したのですが、僕自身が昨年よりも明確な目的意識を持って参加したこともあり、学びや気づきの多い極めて充実した研修でした。記憶が新しいうちに書き記しておこうと思います★


(1)Kovio社訪問
集積回路印刷技術を核とするMIT発ベンチャー企業。具体的には、鉄やプラスチック、あるいは柔軟な基板上に、シリコン・インクで回路を印刷する技術をコアに持っています。Kovio社はこの技術をRFIDタグの大量生産に利用しようと考えているそうです。今や日本では、RFIDSuicaやお財布ケータイなど、乗車カードや携帯電話に利用され普及が進んでいます。RFIDの課題はコストでしたが、Kovio社の電子回路印刷技術を用いることで低コストで大量生産することが可能になるそうです。

以下、Kovio社の考えるRFIDの用途や今後の戦略について、社員に伺ったお話です。

RFIDの用途の一例】
製品(例えばコーラのペットボトル)にRFIDタグを取り付ける。またそのRFIDタグGoogleなどの企業から得た情報をインプットする。さらにRFIDタグの情報を読み取るRFIDリーダーを携帯電話に導入する。それにより、消費者は携帯電話を製品に近付けるだけで、その製品に関する様々な情報を瞬時に得ることができる。(例えば、糖分やカロリー情報、コカ・コーラ社の新製品情報など)


【今後の戦略など】
このビジネスモデルの核となるのは、RFIDの標準(デファクトスタンダード)を取ること。そのために関係各社と多面的に交渉を進める必要がある。具体的には、コカコーラなどの製造業に対して製品にRFIDタグを取り付けてもらうと同時に、NOKIAなどの有力携帯電話会社にRFIDリーダーを装着してもらい、さらにGoogleなどの企業にdatabaseを提供してもらうべく交渉する必要がある。


【日本市場】
既に凸版印刷など、Kovio社の顧客には日本企業が多い。日本はSuica電子マネーなど、RFIDが最も普及している国の一つである。よって他国と比較しても日本市場はKovioにとってかなり重要だと考えている。


Kovio社の玄関にて



(2)M先生のお話
M先生は、ウェブ・人口知能に関する研究をしていて、TMIの准教授を務めていらっしゃいます。僕はM先生の授業を取っていなかったため、今回の海外研修で初めてお話させていただきました。30歳代前半で東大の准教授になられた輝かしいキャリアを持つ方なのに、物腰が柔らかく謙虚な姿勢で学生に接して下さり、心から尊敬できる先生だと感じました。M先生自身、二年間スタンフォードの研究員もされていたこともあり、シリコンバレーや海外で活躍できる人材の持つ資質やに関して貴重なお話がありました。以下、まとめておきたいと思います。

【専門を突き詰めること】
Stanford大学の学部生と東大の大学院生だったら、シリコンバレーの企業はまず間違いなくStanfordの学部生を取るだろう。それが現実。その現実をしっかりと見つめる必要がある。
一つの分野、専門をひたすら突き詰めてやり続けることが、シリコンバレーや海外で成功する道。海外の人材に、「こいつは頭いいな」と思わせたら勝ち。そのためには、誰にも絶対に負けない分野を一つ作る必要がある。
TMIの学生ならば、TMI(技術経営)という専門を突き詰める必要がある。その分野で誰にも負けないくらいにならなくてはいけない。


【専門性に加えて・・・】
誰にも負けない専門性を持っていることに加えて、最低限必要なのは、以下の三つ。
①英語力
英語圏での人脈。
③教養。文化を理解する力。
これら三条件を満たしつつ、誰にも負けない専門性を持つことは相当大変である。M先生自身でさえも、シリコンバレーではまだまだ通じないと感じることがある。


【日本を変えられる人材】
最終的に日本を良くしたいという思いを持っているのは素晴らしいし、TMIの学生には是非持っていてほしい。しかし、日本を良くするためには、少なくともシリコンバレーや世界で闘って十分に通用する人材でなければならない。つまり、シリコンバレーで通用しないような人材に日本は変えられないし、動かせない。

この話を聞いて、就職が決まり緩んでいた気持ちが引き締まる思いがしました。自分はシリコンバレーで通用する人材になれるのか?TMIでの残りの半年間や経産省に入省した後に、どういう専門性を身につけられるのだろうか?そもそも上記の三要件さえも、世界の同年代のトップレベルの人たちに比べ圧倒的に劣っているのではないか?
とにかく、修士論文に全力で取り組み技術経営という専門性を磨くこと、日々英語で文献を読んだりニュースを見たりして英語力を徹底的に高めること、読書や映画を幅広く鑑賞するなどして教養を身につけること・・・残り半年の学生生活で僕ができるのは、これらのことに地道に・愚直に取り組むことだけだと強く思いました。


(その2に続く)