科学技術政策・産業政策

経済産業省出身の坂田一郎先生の授業。

イノベーション関連の学術論文で最も数の多い分野はヘルスケア(health care)と環境(environment)である。ヘルスケアは特にアメリカで重点的にイノベーション政策が取られており、逆に日本は環境分野の技術開発に強みを持っている。


イノベーションの中には必ずしも最先端の科学技術を伴っていないものもある。例えば、身近な例でも以下の3つが挙げられる。
(1)タイムズ24
無人駐車料金徴収装置のついた24時間無人の駐車場を、全国的にネットワーク化した。駐車場の利用者にとっては電子マネーを用いたキャッシュレス決済が可能になるメリットがある一方で、遊休地の所有者にとっては従来は駐車場にできないと考えられていた小さなスペースさえも駐車場として活用できるようになるメリットを生んだ。
(2)アスクル
→事務用品を中心とした企業向けの通信販売事業。その名の通り商品が必ず「明日来る」ため、企業は在庫を抱えるコストをなくすことができ、また庶務業務の人件費削減も可能にした。
(3)QBハウス
→10分1000円の床屋。カットのみを行い、洗髪やマッサージなどのサービスは行わない。利用者にとっては短時間で安く散髪を済ませられるメリットがある。店側としては水道もいらず、スペースも小さくて済むため、駅の中を中心に全国に事業を展開している。ブルーオーシャン戦略の典型例。

⇒これらのサービスは最先端のテクノロジーを持たないが、社会的なインパクトが大きい点でイノベーションを起こしたと言える。


イノベーション学には主要な三領域がある。
(1)イノベーションファンダメンタルズ(Innovation Fundamentals)、(2)テクノロジカルイノベーション(Technological Innovation)、(3)イノベーションマネジメント(Innovation Management)
(1)には大きく以下の4つの領域があり、本授業ではこれを主に扱う。
Regional(地域クラスター)、Academia-Industry relation(産学連携)、Intellectual Property Right(知的財産権)、Economic Growth(経済成長とイノベーション

TMIが他のMOT大学院と異なる点、差別化している点は、企業における技術活用や「起業家」の養成といった分野に限らず、「国家や社会における技術の価値を論じる」というように、「社会に貢献するための技術」に重点を置いている点である。実際、TMIが輩出する人材としては、「社会に貢献し社会経済を引っ張る能力、社会的使命を持つこと」が期待されている。これは東京大学に求められる宿命でもあると僕は思う。
僕自身授業を取ったり先輩の話を伺う中で、民間企業で働くよりも国家の政策立案に携わりたいという気持ちが少しずつ強くなってきた。その意味でこの授業はTMIならではであり、社会にイノベーションを起こすための科学技術政策を講義してくれるので、僕の興味・関心とかなり合致している。今後も授業にしっかり出て、「社会の中の科学技術」というテーマに対して自分なりの確固たる意見・主張を築き上げていきたい。