8月27日号 移民について

Immigration –Let them come-

○ 移民は(経済が)最も良い時でさえ機微なテーマであるが、ましてや今回はそのような状況ではない。経済危機は富裕国で何百万人の仕事を奪い、政府は移民が現地の労働需要に与える影響に特に神経質になっている。
○ そのような心配は非論理的である、なぜなら移民は(景気に対して)反循環的(counter-cyclical)であるからだ。富裕国での不景気は移住予定者の運試しを思いとどまらせている。(例:アメリカにおけるメキシコ人移民の急激な減少、ヨーロッパへの移民の減少)移民者の流入増加は成長が回復したことの主要な指標であることを示す研究も存在する。
○ しかし政府はよく労働市場に移民を流入させることを嫌がる。不景気において、政府は新しい移民を防止し、既に移住している人を取り除こうとさえする傾向にある。近年ではデンマークやフランス、イタリア政府はパスポートを必要としないシェンゲン地域を逆戻りさせ、国境における制限を再導入している。高度労働者を優遇するポイントシステムの先駆けとなったオーストラリアやカナダでさえも、労働者の許可数を削減している。イギリスの首相デイヴィット・キャメロンはEU域外からの移民に対しキャップを課した。スペイン、日本、デンマークは、移民が本国へ戻る際に助成金を与える「ペイアズユーゴー」計画を打ち出した。
○ 移民に関する懸念は、特に仕事の供給が不足している状況においては、理解できる。ヨーロッパとアメリカの世論調査は、大部分の地域住民は移民が悪影響を与え、仕事のマーケットにおける地域住民の機会を損なっていることを示している。しかし、移民が現地の労働者を害しているという根拠は弱い。季節労働や建設労働においては、安い外国人労働者は賃金を低下させ、スキルの低い労働者にとって仕事を見つけにくくさせている。しかし、新しい労働者の柔軟性と意欲は生産性を高めイノベーションを促進することもある。
○ 公共サービスへの負担は地域住民の忍耐力を試すものである、特に予算削減がそのようなサービスの維持を困難にしている場合は。例えばイギリスでは、公共サービスの圧力に直面した資金不足の地域当局を助けるための予備費は使い切られてしまった。しかし、移民は彼らが教育や医療や他の予算に与える短期の追加的な負荷以上に、報いるものである。
○ 政治家はしばしば、移民に関する分別のある議論がしたいと言う。しかし、彼らは有権者の移民に対する恐れを緩和しようとするのではなく、それにしばしば迎合する。今や政治家は、そうすことに対し用心深くあるべきだ。他の地域では移民の技能に対する競争は大きくなってきている。アジアは急速に移民を惹きつけている。
○ かつては移民労働者に対して閉鎖的であった中国は、今や居住許可をプロフェッショナルや学者、起業家に配っている。2009年には上海は十万人の外国人居住者を記録した。南の港である広州でも、ヨーロッパや中東、アフリカから人を惹きつけ、同じくらいの数字が定着している。韓国も2007年以降移住者の上昇が起きており、アメリカで教育を受けた卒業生を惹きつけることに熱心である。
○ 移民は、全体として、経済にとって望ましいものである。今や富裕国は、あらゆる経済的な助けを必要としている。政府は移民を母国へ送り返すのではなく、彼らの能力やエネルギー、発想、労働意欲を生かして、彼らが移住してくるのを奨励すべきである。もしそうしないのであれば、どこか他の政府がそうしてしまうであろう。