最後のキャンパスツアーと「東大生」について考えたこと

3月6日と7日に、自分にとっては最後となる東大キャンパスツアーをやった。6日には母親とおじさん・おばさんもツアーに参加してくれ、すごく喜んでくれた。普段家ではあまり愛想よく振る舞う方ではないので、お客さんの前で声を張って頑張って話している姿を見て、良い意味で驚いたのもあったのだと思う。この時初めて、キャンパスツアーを続けてきてよかったなと素直に思った。

この団体には大学4年生の時に入った。そもそも入ろうと思ったきっかけは、当時人前で話をすることがものすごく苦手で、ましてや初対面の人の前で話すと足が震え出してしまうくらいの情けない状況だった。それでも何とか続けてきて、大学院1年生のときには事務局長として代表も務めさせてもらった。
週末に2時間のツアーを実施し、全国各地からわざわざ足を運んでくるおじいさん・おばあさんや東大を志望する中高生たちに、本郷キャンパスの案内や学生生活の紹介、大学受験のアドバイスをしてきた。大学院1年の時は事務局長として裏方の仕事が中心だったためほとんどツアーをやらなかったけど、3年間で合計30〜40回くらいはツアーをやったように思う。


ツアーで様々な年齢・出身・職業の人たちと接してきた中で、強く思ったこと。東大生は良くも悪くも世間から注目される存在であること。やっぱり、普段は必然的に東大の同級生や先輩・後輩と過ごす時間が圧倒的な割合を占めるから、中々気付かないのだけど、世間の目から見れば東大生はそうそう接する機会のないもの珍しい存在なんだと思う。だからお客さんも、東大生ってどんな奴なんだろう、と興味津津でツアーに参加してくれることが多い。
中には、「なぜ東大だけがこれだけ研究費を与えられ、構内にもコンビニやレストランがあり、恵まれた待遇を受けているのか。君たちは国の税金で勉強しているありがたみを理解しているのか。」と文句を言われたこともあった。一方で、「東大生ってもっと世間知らずで、変人のような人なのかと思っていた。ツアーを通じて東大生のイメージが変わった。これからも頑張ってください!」と、好意的な印象を持って帰る人たちもたくさんいた。地方からわざわざ見学しに来た高校生に、「ツアーに参加して、東大って魅力的な人がたくさんいることが分かって、何が何でも東大に入りたくなりました。受験勉強のモチベーションも一気に上がりました。ありがとうございました!」と言われた時には、本当に嬉しい気持ちになった。

全く状況は異なるが、例えば合コンのような初対面の飲み会においても同じことが言えそうだ。東大生たちと合コンをするとなれば、相手は、東大の男ってどんな人なんだろうか、と良い意味でも悪い意味でも関心を持っていることが多いように思う。ここで、世間の持つイメージ通りの高慢で自分の自慢話ばかりする空気の読めない東大生が出てくれば、「最悪の合コンだった。東大生ってやっぱり嫌だね。」と後で批評されるだろうし、逆に細かい心配りができてしっかりと相手の話を聞ける東大生が出てくれば、「東大生なのに素敵な人たちだった。」と大きくプラスに評価されるのではないだろうか。

つまり、東大ブランドを生かすも殺すも、自分次第なのだろうと思う。社会に出てからも、「こいつ東大出身のくせに何も考えてないな。浅い人間だな。」「やっぱり東大で勉強しかしてこなかったから、弱い人の気持ちが分からない奴だ。」と思われるか、「さすが東大出身。思慮深いし、周囲の人に対する気遣いもできる人だな。」と思われるかは、全て自分のこれからの言動次第なんだろう。


ふと、国家公務員、いわゆる官僚も、もしかしたら「東大生」と同じように良くも悪くも世間から注目を浴びている存在なのかなと思った。自らの保身だけに走るような言動や、国民生活のことを顧みないような行動をすれば、容赦なくものすごい勢いで批判される気がする。逆に、周囲の人たちに対して誠実な態度で接し、真剣に国の将来のことを考え、国を良くするために勇気ある行動を日頃から心掛けていれば、きっと応援・激励してもらえるのではないだろうか。