進路の報告

先週、7月9日に経済産業省から内々定をいただき、来年から経済産業省で国家公務員として働くことを決意しました。正直、官庁訪問をする前は内定をもらっていた商社に行く可能性も大いに残していて、気持ちは半分半分の状態でした。ただ、官庁訪問が終わる頃には迷わず経産省で働くことを選びました。


経産省と商社の比較】
①仕事内容
幼少期アメリカで過ごした原体験や、大学院時代海外の優秀な学生と交流する中で、日本人としての自分を強く意識することや、世界の中での日本の存在感・地位の低さに悔しさを覚えることが多くありました。その中で、「仕事を通じて日本のために貢献したい、日本人が誇りを持てるような国を作ることに寄与したい」という想いを強くしました。官庁訪問でお会いした経産省の課長補佐の方たちは、目を輝かせながら、恥ずかしげもなく日本のあるべき姿を一学生である僕に語ってくれました。商社でも、特に僕が内定をもらっていた商社は仕事を通じて社会貢献することをビジョンに掲げていて、日本に貢献するという想いは実現できると思いました。ただ、やはり利潤を追い求めるのが民間企業の使命であり、社会貢献は後回しになってしまうと思いました。直接的に「国益向上を純粋に追い求められる」のは国家公務員だからこそできることなのだと感じました。
また経産省の仕事のスケールの大きさも魅力的に映りました。入省5年目くらいで課長補佐という役職に就き、その分野の政策をほぼ全て一任されて企画・立案できるようになるようです。実際課長補佐になれば、基本的にはどんな企業のどんなランクの方たちにも会ってヒアリングを行うことができるそうです。日々各業界の最前線で働く人たちにヒアリングを徹底的に行い、政策ニーズを引き出し、省内で議論を重ね政策を作り上げていくという仕事の過程も純粋に面白そうだと思いました。20代のうちから国の方向性を動かせる責任ある立場に立つことができるというのは、重圧ではありますが、この上なくやりがいのあることだと感じました。


②職員の方たち
経産省官庁訪問では、頭の切れ・洞察力の深さ・視野の広さ、どれを取っても圧倒される職員に何人も会わせていただきました。単純にすごい!と感心するとともに、自分自身数年後、数十年後にこうなっていたいと思える憧れの人・ロールモデルとなり得る人がたくさんいました。
加えて、セカンドキャリアの可能性が限りなく広いことも魅力的に映りました。実際経産省を出た多くの方たちが、学者・大学教授になったり、OECD世界銀行のような国際機関で働いたり、政治家や地方公共団体の首長になったり、企業の経営者になったり、ベンチャーキャピタリストになったりしています。もちろん商社にもそういう人はたくさんいると思ったけれど、輩出する人材がビジネス界に偏っている印象を受けました。僕は機会があればアカデミックな世界に関わったり国際機関で働ければとも思っているので、経産省の方が自分の可能性が広がると考えました。


③待遇・ワークライフバランス
正直、ここで最後は本当に悩みました。経産省では、特に1,2年目は毎日深夜まで働くことになることは避けられなさそうです。商社は給料も良く、仕事は忙しいとは言え毎晩のように深夜まで働くことはないように思います。給料も言わずもがな、国家公務員は決して高くなく、商社はかなりの高給です。
ただ課長補佐になれば、自分でタイム・マネジメントをして仕事の段取りを決められるようになるため、自分の意識の持ち方次第でいくらでも時間は作れるようです。実際に、何人もの先輩職員の方たちは家庭と仕事とを上手く両立させているようでした。


【評価ポイント・採用プロセス】
あとは、経産省の職員の方たちが、ありのままの僕を高く評価してくださったことも進路を選ぶ上で決め手となりました。素直で吸収力・学習力があり前に進んでいける力があること、頭の中がクリア・明瞭であること、自分の頭で考えることができること、知的好奇心が広いこと、答えに向かって最短距離で突き進んでいけること、を評価してくださったそうです。またマクロで俯瞰的に物事を考えることが好きな人間であるから経産省に向いていると思う、とも言ってくださいました。正直、褒められすぎて怖いですが(笑)、素の自分の人間性を評価してくださって本当に嬉しく思いました。
採用プロセスも非常に慎重で丁寧でした。官庁訪問中の6日間、あらゆる角度から徹底的に評価されているように感じました。実際に政策立案を最前線で行っている課長補佐レベルの方たちと一時間程度話をする原課面接が一日3人、また人事面接が一日1〜2人、ブース面接と言われる比較的年齢の近い相談役の人との面談が一日2〜3回、控室でも採用チームの方たちと雑談が行われ、それらとは別にグループディスカッションや政策のプレゼンテーションもありました。今年は職員の方たちがお忙しい中30名ほどが採用チームとして採用に関わってくださり、一人一人を多角的に見て評価してくださいました。僕は民間企業の採用プロセスも受けましたが、どの企業も面接は多くて5,6回であったし、ここまで徹底的に採用に力を入れている企業はどこもありませんでした。


【同期】
事務系は28人に内々定が出ました。今年は院生の採用数が多く、28人中11人が院生でした。今年は受験者数もここ数年で一番多かったようで、内々定者は粒揃いで個性が強いです。何だかんだで東大法学部や東大経済学部が多いのですが、駒場の院生、ロースクールの学生、工学系研究科の院生、公共政策大学院、一橋の経済の院生などもいて、多様性を特に重視しているように感じました。これに技術系の19人が加わって、一種試験採用の同期は約50人ほどになります。全体としてはノリが良く元気のいい人が多いなぁという印象を受けましたが、大人しい人や知的な学者肌の人も中にはいて、全体のポートフォリオを上手く組んでいるなぁと感じました。


【ネガティブな面】
とはいえ、経産省の全てを諸手を挙げて肯定しているわけではありません。中には少し傲慢だなと感じる職員の方や、尊敬できそうにない職員の方もいくらかはいたりしました。また経産省こそが日本経済を真に支えている組織だという自負の強すぎる職員の方も少しいるように感じました。もちろん自分の属する組織を誇り高く思う気持ちは常に持っていたいですが、無批判に経産省の全てを肯定するのではなく、時には批判的に経産省という組織を見ることを意識的にやっていきたいと思います。経産省不要論というのも時折聞くことがあります。ただ個人的には、「官から民へ」の潮流と共に政府の役割は小さくなっていくとは言え、民間企業の活動を最大化するような市場環境を整備する経産省の役割は今後もなくならないのではと考えています。誰かがそのような市場の失敗を是正し、市場環境を整える役割を担わなくては、日本の経済活動は停滞してしまうと僕は思います。
また非常に偉そうな言い方になるかもしれませんが、東大生の最優秀層で国家公務員を目指す人の数は思ったよりも多くない印象を受けました。あくまでも個人的な私見ですが、東大生の中でも本当に意識が高く、人を惹き付ける魅力のあるリーダーシップのある学生の多くは、外資コンサルや投資銀行、商社などに進路を決めているように感じます。だからこそ、自分自身が国・行政サイドを引っ張っていくくらいの気概を持ち続け、国家公務員にもこんなに優秀な人材がいるんだと驚いてもらえるほどに高い志を持って働きたいと思います。