教育力

最近、家庭教師先で聞かれる難解な問題に即答できないことが増え、生徒の志望校合格のために何が出来るか悩んでいた時に、齋藤孝さんの著書であることと「『いい先生』とはどういう人か」という帯に惹かれ、衝動買いした本。しかし、家庭教師の先生としてどう振舞うかということ以上に、組織のリーダーはどうあるべきか、人の上に立つ人間が持つべき資質とは、といったことまで考えさせられる良書であった。


教育力 (岩波新書)

教育力 (岩波新書)

  • 教育の基本原理は、「あこがれにあこがれる関係づくり」である。すなわち、教える者自身があこがれを強く持ち、燃えて学び、魅力を放つことで、生徒の学ぶ意欲をかき立てること。
  • 教師に求められるものは、専門的力量と人格的魅力。つまり、その道に卓越していることに加え、コミュニケーション能力を含めて人間的な魅力があること。
  • 教育者の使命は、「学び続ける人生は楽しい」というメッセージを発し続けること、またそれによって、人から言われなくても自発的に勉強し続けられる人を育てることである。
  • 本当に優れた先生とは、自ら直接何か手を下さなくても、生徒たちがやる気になるような空気をつくることのできる人。生徒たちのやる気は、先生の尊敬される実力と人格から生まれるのだ。

この本を僕なりに要約すると、本当に優れた教師とは、勉強する楽しさを誰よりも知っていて、また尊敬される実力と人格的魅力を備え、それにより生徒に「あこがれ」を抱かせることができる人物だ、ということだろう。
僕自身、家庭教師先の生徒にプロの受験テクニックや解法パターンを教えることはできないと思う。それは予備校の講師に譲るとして、僕がしてあげられることは、「学問が楽しくてしょうがない。勉強することでこんなに人生の幅が広がった。今の大学生活が知的刺激に満ち溢れ充実していて仕方ない。」といったメッセージを伝えることで、生徒の勉強へのモチベーションや大学生活へのあこがれを喚起してあげることなのだろう。
学校の先生に限らず、組織で人の上に立つ人間には、後輩を育て教育する義務が生じると思う。齋藤孝さんはこの本を通じて、教育の現場においてだけでなく、あらゆる仕事においてリーダーになれる資質について述べたかったのではないだろうか。青臭いセリフだが、僕自身、良い家庭教師の先生になるためにも、将来リーダーと言われるような存在になるためにも、人格的に、また教養という面においても、常に自己研鑽し、周りからあこがられるような存在になっていきたいと思った。