コミュニケーション力について

齊藤孝さんの本が好きで色々と読んでいるが、その中でも一番気づきが多かった本。

コミュニケーション力 (岩波新書)

コミュニケーション力 (岩波新書)

【コミュニケーション力とは】

  • コミュニケーションとは、情報を伝達するだけではなく、感情も伝え合い分かち合うこと。つまり、情報のやりとりだけではなく、感情的にも共感できる部分を増やし、信頼関係を築くことが大事。
  • 理想的なコミュニケーションとは、話をすることでお互いにとって新しい意味がその場で生まれるという、クリエイティブな関係性のことである。
  • コミュニケーション力の中心は、文脈を的確につかまえる力、文脈力である。会話における文脈は、(1)その人の言っていることに脈絡や一貫性があるかないか、(2)お互いの発言がきちんと絡み合っているかどうか、の二つである。
  • 逆にコミュニケーション力のない人の特徴は、(1)質問をあまりしない。そもそも相手のことにあまり関心がない、(2)人の話を途中で遮る。相手の話を最後まで聞ききらない、(3)人が使った言葉をうまく使いこなすことができない、の三つである。
  • コミュニケーション力をはかる基準は、話す相手が幅広いこと。老若男女誰とでもすぐに世間話ができることは、重要なコミュニケーション力である。
  • コミュニケーション力には小学生から大リーガーまでの実力差がある。
  • コミュニケーションは、世の中を生きるための重要な手段であると同時に、生きる目的そのものでもある。コミュニケーションを通じて感情を交わし合い、考えを語り合うこと自体が人生の目的なのである。


【コミュニケーションの基盤】

  • 言語的コミュニケーションの基盤には、身体的コミュニケーションがある。例えば、一緒に笑い合うことで身体が響き合っていることをはっきりと感じ取り、コミュニケーションがしっかりできていることを実感できる。
  • 身体的コミュニケーションの基本原則は、目を見る、微笑む、頷く、相槌を打つ、の四つである。
  • 状況や役柄に合わせて身体のモードチェンジをし、しなやかにコミュニケーションすることが大事。例えば、数十人の前でスピーチをする場合は、日常を生きている身体よりもずっとテンションの高い身体、「演劇的身体」が要求される。
  • エネルギーが交流すること自体がコミュニケーションの目的である。エネルギーをうずうずと体の内側でくすぶらせている感じの人はコミュニケーション力があるとは言えず、エネルギーを惜しみなく放出し周りを活性化させられる人はコミュニケーション力があると言える。
  • その場における各人の身体から発せられる空気は、場の雰囲気に大きく関与する。よって場を活動的な雰囲気にしたければ、自分自身の身体を上機嫌にセットする必要がある。

今年僕は就職活動をしたのだが、各企業が求める能力として最も頻繁に目にしたのが、まさにこの「コミュニケーション力」という言葉だった。しかしこの「コミュニケーション力」は人それぞれ捉え方が違っており、かなり広い意味を包含しているように思われる。


例えば世間では「コミュニケーション力」を、ノリが良く話がペラペラと上手で、人間関係を要領良く立ちまわれる力という負のイメージで捉えることがある。実際、はてなブックマークの人気記事コミュニケーション能力をウリにする人が醜悪な理由 - 分裂勘違い君劇場 by ふろむだでは、コミュニケーション力はそのようなネガティブな意味合いで使われている。

一方でこの本では、真に「コミュニケーション力」のある人とは、話の文脈に沿って互いの発言を絡み合わせることができ、さらにそうした言語的コミュニケーションのみならず身体的コミュニケーションも使いこなし、結果として情報のやり取りだけでなく感情的にも共感を生める人であると定義している。


自分が決して「コミュニケーション力」のある方の人間ではないので偉そうには言えないが、僕が苦手とするタイプの人は「コミュニケーション力」のない人に尽きると思った。例えば、自分の話しかせず相手に質問を投げかけたり話題を振ったりしない人。これは意外にも東大の助教や東大生にも少なからずいる気がする。これらのタイプの人は自分以外の人間にそもそも関心がないように思える。もう一つは、顔の表情が乏しく内側にエネルギーをくすぶらせているような人。塾講師をやっていた時にそういう生徒が何人かいた。こちらが何を問いかけても返事をすることも頷くこともせず、不機嫌そうに無表情でいる。齊藤孝さんの言葉でいえば、身体的コミュニケーションが全く取れないタイプの人である。


幸い、僕が今仲良くさせてもらっている友達には、「コミュニケーション力」に優れ、話していて新たな気づきが得られる人が多い。特に、東大の友達や先生は、何だかんだ言って文脈力があり互いの発言を絡み合わせることが上手な人が多いと思う。そうした友達と付き合えていることは何より幸せだし、彼らにとって自分もクリエイティブな関係性を生み出せる対話相手でありたい。そのためにも、自分自身「コミュニケーション力」を高め続けていきたいと思った。