アントレプレナーシップ

今学期は毎週水曜6眼に「アントレプレナーシップ」という授業を取っている。
東大の卒業生でベンチャーを起業した人や産学連携に関わっている人が毎週オムニバス形式で講演をしてくれる贅沢な内容であり、授業最終日にレポートを提出すれば単位が来るというお得な授業。
前回はミクシィの笠原社長が来て起業に至った経緯や起業のために必要なことを話してくれたが、今日は経済産業省で産学連携・大学発ベンチャーの推進を行っている吉澤さんが講演をしてくれた。
僕自身将来は自分で会社を起業するよりかは、ベンチャー企業に資金出資するベンチャーキャピタルベンチャー企業の振興政策を立案する行政官の立場に立つことに興味があるので、今日の吉澤さんの講演は有意義で為になるものだった。
来年進学する技術経営戦略学の授業の導入的な内容であったと思うので、乏しい知識ながら今日の授業の要旨を書き記しておきたい。

大学発ベンチャーの現状】

  • 大学の研究成果による社会貢献の必要性、大学全入時代における各大学の生き残り戦略の必要性、の二つの理由により、企業と大学の共同研究は急速に拡大している。
  • 大学の技術移転におけるライセンス収入は日本では15億円、アメリカでは1200億円と桁が二桁も違うことからわかるように、日本の大学の技術移転は大きく後れをとっている。
  • 日本のベンチャーキャピタルIPOを目指さない大学発ベンチャーにはお金を投入しない。よって上場を目指さない大学発ベンチャーは銀行からの融資を受けるしか方法がなく、資金繰りに悩んでいる企業が多い。
  • 日本市場において企業の上場基準は年々厳しくなっており、特にバイオ系企業の上場はハードルはかなり高い。

【これから求められる人材】

  • 東大の学生は大手企業に進むことが多いが、大手企業が終身雇用で守ってくれる時代は終わった。自分自身の商品価値を常に意識して高めていかないと、生き残ることができない厳しい時代にある。
  • 大学発ベンチャーの経営者には、技術的知見はもちろんのこと、ビジネスモデルを策定する能力が最も求められる。堀場製作所の堀場さんは自分のビジネスモデルで3000万円くらい簡単に作れないような人にはベンチャーなど興してはいけない、1円で会社を作るなんてとんでもない、と言っていたらしい。
  • 雇用人材として今後はドクターの重要性が高まってくるだろう。アメリカはドクターが活躍する社会であり、Ph.Dを持っていることで自分の専門分野だけでなく他の分野においても高度な問題解決能力を有しているとみなされる。現にアメリカではPh.Dを持っている人が行政官として働いていることも多い。
  • 日本のドクターがこのような高度な問題解決能力を持っているか、あるいは日本の大学がドクターに対する専門的で高度な教育をしっかり行っているのかは疑問。

【大学による出資】

  • ハーバード大学は3兆円の基金を持っており、運用益は3000億円である。この運用益でドクターに給料を与えている。
  • 一方東大は創立130周年を記念して130億円の基金を設立することを目標にしているが、運用はTLO(技術移転)に限られてしまっている。多様な用途に運用できる仕組み作りが重要であろう。

ベンチャーと大企業のアライアンス】

  • 欧州では大企業とベンチャーのアライアンスは積極的に行われており、研究開発はベンチャー、販路開拓は大企業というように役割分担を上手く行っている。
  • 一方日本では大企業のアライアンス先としては欧米のベンチャー企業が大半である。日本の薬事法では認定を受けるのに欧米の倍近い期間を要してしまう等、制度面の遅れが主な原因である。