スローキャリア

スローキャリア (PHP文庫)

スローキャリア (PHP文庫)

マッキンゼー出身で人事コンサルに長年関わってきた高橋俊介さんが、「スローキャリア」という新しいキャリアの作り方について述べた本。

【キャリアに関する誤解】

  • 全ての働く人が強い上昇志向を持っているわけではない。
  • 自分のキャリアは自分自身が作るのだという「自律的キャリア形成」の発想を持つことが大事。
  • 世の中の変革のスピードが速くなってきた今の時代、キャリアにおいて長期的で明確な目標を立てるのは危険。
  • 三ヶ月や六ヶ月という短い単位で目の前の仕事に課題を持って取り組み、そこで新しいスキルを身に付けていくことが一番合理的。
  • やりたいこととは違う分野で、意識してキャリアの幅を広げておくほうが、本当にやりたい仕事に就いた時にうまくいく。
  • 「オンリーワン・キャリア」は、一見関係のないような過去の仕事の集積の上に成り立っている。

【スローキャリアとは】

  • 人間のキャリアの80%以上は偶然の出来事によって左右されており、キャリアを計画的につくりこむことはできない。
  • 上昇志向以外の仕事に対する動機として、社交動機(人と仲良くしたい)、理解共感動機(人を理解してあげたい)、抽象概念思考動機(抽象的概念的なことを考えるのが好き)、徹底動機(細部まで徹底してこだわるのが好き)などがある。
  • このような上昇志向でない動機を中心に活用し、あらかじめ達成すべき目標があるのではなく、自分の価値観に従って、自分で自分の人生をマネジメントしながら日々生きていき、振り返った時結果として後ろにキャリアができているのがスローキャリアである。
  • スローキャリアは、仕事の質を重視し、自分らしさや個性にこだわった仕事の仕方を目指す。
  • 困難を乗り越えようとするのではなく、困難から学んだことを活かして挑戦の矛先をサッと変えられる人がスローキャリアに向く。
  • 仕事におけるキャリアの構築と、プライベートライフの構築は、ある時期どちらかに極端に傾くことはあっても、長期的にはバランスがとれていなければならない。

【ネットワークづくり】

  • ネットワークづくりのための投資行動や、一見関係ないと思えるような人にも自分の問題意識や考えを伝え共有する布石行動を、普段から無意識的・習慣的にとっている人が良いネットワークを構築する。
  • ネットワークには「量・多様性(性別、年齢、職種などの異なる様々なグループに人脈を持っていること)・深さ(強い信頼関係で結ばれていること)」の三つが重要である。

僕自身今年就職活動を経験したのだけど、エントリーシートで「あなたの五年後、十年後のキャリアプランを書け」といった質問に窮してしまうことが多かった。
でも現代のようにキャリアの先行きに不確定な要素が強い時代には、むしろ直感的な判断や自分の内的な動機に忠実に従うことが大事、というメッセージが強く心に響いた。


また、全ての人が強い上昇志向を持っているわけではない、というのにも共感できた。
東大生の中でも都市工学科の友達なんかは特に、出世して権力を手中にするといった上昇志向が全くなく、自分らしさや好きなことにこだわった生き方を目指している人が多い。
僕自身も、上昇志向はある程度は持っているが、それよりも「人と仲良くしたい」とか「尊敬できる先輩・仲間と仕事がしたい」といった動機の方が強い気がする。
幸いにも僕は後二年半は学生でいられるので、その期間に自分に合ったキャリアを模索しながら見つけられればなぁと思った。