英語学習①TOEFL-ibtで110点以上を取りたい

突然ですが、TOEFL-ibtの点数を今年中に110点以上に上げたいという目標を最近掲げました。なぜこの目標を掲げたかというと、一つはアメリカの大学院に留学するという近い将来の目標のためもう一つは、TOEFL-ibtの点数を高める努力そのものが、今後の国家公務員としてのキャリアの中で国際的なフィールドで仕事を進めていく上で必ず役立つ、行政官としての自分の付加価値を高めることになると信じているからです。TOEFL-ibtは100点前後から点数が中々上がらなくなると言いますが、僕自身もその例に漏れず、100点を超えたあたりから全く点数が上がらなくなりました。振り返ると、僕自身の英語力は、大学院1年生の冬(2009年1月頃)に一度ピークを迎え、その時期はTOEFL-ibtで102点を取っていました。TOEICでも975点を取ったのがこの時期でした。大学の英語関連の授業はいくつか取っていましたが、その中でも特に役立ったのは工学部のスペシャル・イングリッシュ・レッスンという理系向けのコースで、アゴス・ジャパン(TOEFL等の英語系資格試験のための予備校)の先生が、わざわざ大学まで出向いて各セクションの解法のエッセンスを教えてくれました。その後、社会人になってから何度か受けていますが、社会人1年目の冬(2011年1月頃)に一気に80点近くまで下がり、その後も80点台を連続して取っていました。危機意識を持って勉強し直したところ、昨年90点台まで持ち直し、最近(2013年1月)ようやく103点(R28L26S22W27)という大学院1年生の一番英語ができた時期と同じくらいの点数まで取り戻すことができました。社会人1年目、2年目の時は毎日終電又はタクシー帰りという日々が続いていたので、家に帰ってから勉強する時間もなく、土日も勉強する気が全く起きませんでした。そういう日々を漫然と送っていると、時間がたっぷりあって勉強だけに集中することができた大学院生の時と比べ、英語力はいとも簡単に落ちてしまうんだと痛感しました。
TOEFLで100点前後のレベルまで到達した後は、小手先の技術(WritingやSpeakingのテンプレートの暗記等)ではなく、良質な英語を大量に読む・聞くという訓練を地道にやっていくしかないのかなと思っています。外務省で大臣や幹部の通訳もしている人にその語学力の秘訣を聞いてみても、魔法のような方法はなく、やはり日々の学習の中でその語学の「質と量」をいかに確保するが極めて重要とのこと。僕自身は、社会人1年目、2年目と比べると楽になったものの、今も帰りが遅くなることが多く、中々まとまった勉強時間を確保することができない環境に置かれていますが、そうした環境下でも、何とかしてTOEFLの点数を100点から110点近くまで高める努力の過程を見せられたらと思います。
とりあえず、以下が今僕が取っている勉強法です。働きながら、いかに英語の「質と量」を保つトレーニングを積むかという観点から、自分なりに考えた方法です。他にオススメの勉強法があれば、教えてください。


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大学受験の頃、僕が一番飽きずに勉強ができ、かつ効果的だったと思う英単語集は「速読英単語」というZ会から出ている単語集でした。これは、文脈の中で単語を覚えるとうコンセプトの下作られた単語集で、歴史から心理学、科学に至るまであらゆるトピックの背景知識を得ながら語彙も増やすことができるという一石二鳥のアイテムでした。社会人になってからもそういう単語集はないかなと探していたところ、出会ったのがこの本でした。最近は、この本の読み上げCDを買って、各トピックをディクテーション、その後シャドウィングという勉強をしています。


TOEFLテスト英単語3800 (TOEFL iBT大戦略シリーズ)

TOEFLテスト英単語3800 (TOEFL iBT大戦略シリーズ)

TOEFL独特の学術的で難解な単語を覚えるのに使っています。「基本ボキャブラリー2000語」と併用しています。


Les Miserables (Oxford Bookworms Library. Human Interest, Stage 1)

Les Miserables (Oxford Bookworms Library. Human Interest, Stage 1)

Kindle Paperwhite 3G (第5世代)

Kindle Paperwhite 3G (第5世代)

英文快読術 (岩波現代文庫)

英文快読術 (岩波現代文庫)

行方昭夫という英語学者の著作(英文快読術)で、英語上達のために日本人に一番足りないのは、意味のわかる文章を大量に読むという経験、いわゆる「多読」の訓練だということが書かれていました。この訓練によって、英語を直感的に(つまり英語を日本語にいちいち直してから理解するのではなく)読み下すことができるとのことです。そのため、例えばOxford出版社から出ているようなRetold版(本来は難しい英語著作を、簡単な英語表現に書き直したもの)を買って、レ・ミゼラブルシェイクスピアの作品等、今まで読みたいと思っていたけど読むことができなかったような文学作品を読むようにしています。その他、最近はKindle PaperWhiteを買って、和約版を一度読んで内容について大まかに知っているようなビジネス本・経済本等を読んだりしています。


○Economist勉強会
毎週日曜日に、Ecnomist Study Group(Economist Study Group 〜若手ビジネスパーソンのための勉強会〜)という20代の若手を中心とした勉強会を開いています。毎週日曜日、Economistのリーダーのトップ記事と、各参加者が選んできたトピックについて、英語でディスカッションをします。参加者も官公庁から商社、金融、コンサルの人たちまで幅広く、それぞれ関心事項も異なるので、世界の政治経済のトピックを中心に自分の興味の幅を広げるのにも役立っていますし、英語で自分の考えを伝える訓練になっているとも思います。これについても、継続的に取り組んでいきたいと思います。(関心のある方は、是非ご連絡下さい。)

仕事に誇りを持てるか

TOEFL-ibt)
最近、TOEFL-ibtの勉強に日々取り組んでいます。留学のためにTOEFL-ibtの高いスコアが必要だということに加え、TOEFL-ibtの勉強をすることでスピーキング力・ライティング力を含めた実践的な英語力を高めることができると思うからです。特に昨年は4回海外出張に行かせてもらいましたが、どの出張でも自分の英語力のなさを強く実感しました。TOEFL-ibtの勉強を徹底的にすることが、今の外交の仕事の成果にも直結すると思っているので、モチベーションを高く維持して頑張っていきたいです。


(仕事に求める重要な要素)
さて、そのTOEFL-ibtのスピーキングの練習をしているのですが、「あなたにとって仕事に求める重要な要素は何ですか。」という問題がありました。TOEFL-ibtのスピーキングは、この質問を見てから15秒間だけ考えて60秒で英語で回答するという極めて難しいセクションなのですが、それはともあれ、その問題集の模範回答に「自分のやっている仕事を自分の家族に誇れること。」という回答がありました。思いがけず、この回答には強く共感しました。どんな仕事であれ、「自分の家族に自分のやっている仕事を誇れるかどうか」という観点は確かに重要だなぁと。僕自身は国のために働きたいとの想いを持って国家公務員として働き始めたわけですが、入省して1〜2年目(2010〜2011年)は、脱官僚の掛け声のもと、官僚は全て悪だと言わんばかりの報道も多く、自分たちの日々やっている仕事が重要ではないのではないかと悲しい気持ちにさせられることが多くありました。ただ、僕自身はこれまでやってきた仕事、今やっている仕事に誇りを持っているし、国のために働いていると胸を張って家族に言うことができます。将来自分の家庭を築いた時も、この気持ちだけは誰に批判されようと強く持ち続けていたいし、この気持ちを持てなくなったら、その時は今の仕事を辞める時なのかと思います。
安倍総理が年末にテレビ番組で、「多くの官僚は高い志を持って働いている。彼らに自分の仕事に誇りを持って働いてもらうことが大事だ。」との趣旨の発言をしていました。これを聞いて僕は純粋に士気が上がりました。トップに立つ人の役割は、下で働いている人が自分の仕事に誇りを持てるように鼓舞してあげることなんじゃないかと思いました。
就職活動や転職活動をしている人でもしこのブログを見ている人がいたとすれば、「自分の仕事を家族に誇れるかどうか」という視点も加えてみるのもいいかもしれません。

留学するとしたら

12月上旬に年に一度の大きな国際会議が終わるまでは土日も含めバタバタと過ごしていましたが、会議終了後から年末にかけては、比較的ゆったりとした日々を過ごすことができました。国際会議においては、英語で言いたいことの半分も言えない自分自身の未熟さを改めて痛感するとともに、国際交渉というフィールドの面白さ、やりがいの大きさを強く感じました。また、自分自身が行政官として英語力・交渉力といった能力を高めることが、国への貢献に直接つながる分野だと感じました。そうした経験もあって、入省前からぼんやりと希望していた海外留学について、より強く明確な目的意識を持って行きたいと思うようになりました。最近は時間が割とあったので、まだ留学に行かせてもらえると決まったわけでもなんでもないのですが、仮に留学に行かせてもらえることになったとした場合、どういう2年間を過ごすのがよいかを考えています。


まず、どこで勉強するかが重要です。アメリカやイギリス、フランス、中国、シンガポールあたりが候補になります。それぞれメリット・デメリットがあるのは言うまでもないですが、僕自身はやはりアメリカに一番関心があります。中国をはじめとする新興国の重要性が増していることは言うまでもありませんが、とはいえ、僕個人の意見としては、今後しばらくはアメリカが経済的・政治的に力を持ち続け、日本にとって(特に安全保障面において)最も重要なパートナーであり続けると考えています。また、世界の超一流の学生(ベスト&ブライテスト)は依然としてアメリカのトップスクールに集まってくるのだと思います。将来的に大使館等を通じて新興国で働きたいとも思っていますが、働き始めてから最初の海外経験としては、まずはアメリカの社会・文化・価値観に2年間どっぷりと浸かって、世界から集結する一流の学生に揉まれながら勉強するのがいいのではないかと考えています。


次に、何を勉強するかについても多くの選択肢があります。経営学修士MBA)や行政学・公共政策学修士MPA・MPP)、経済学修士、法学修士(LLM、ただし法学士を持っていないと受けられない)などが候補となります。どの学位も魅力的ですが、今のところ、MPA・MPPに最も関心があります。理由の一つ目は、僕自身が大学・大学院と工学系のバックグラウンドを持っていて、政治・経済について体系的に勉強したことがないからです。僕が調べた限りは、多くのMPA・MPPの学位で、ミクロ・マクロ経済、国際政治、国際法などをバランスよく学べることができるようです。二つ目は、ビジネスマン・起業家らとは違った視点・考え方を提供することが行政官としての付加価値につながると考えるからです。MBAは最も難関な学位の一つですし、世界から極めて優秀な人材が集まるとも聞いていて、正直魅力的に映ります。また、僕の所属する役所では民間企業の競争環境整備や産業の競争力強化が政策の中心となるので、MBAでビジネスの仕組み・民間企業の行動原理を勉強することは間違いなく役に立つと思います。ただ、僕自身は、経営学の基礎は大学院(技術経営を専攻)である程度勉強しましたし、MBA経営学を更に追及するよりも、自分にとっては未知の世界である国際政治や経済、外交といった分野に挑戦し視野を広げる方が、行政官としての付加価値を高められるのではないかと考えています。


最後に、どの学校で勉強するかという問題が残ります。一つの重要な判断材料として、大規模なスクールか、小規模なスクールかという基準があります。それぞれメリット・デメリットがあると思いますが、大規模なスクール、例えばハーバードの行政大学院(ケネディスクール)やコロンビアの国際関係大学院(SIPA)のようなところで勉強すれば、一学年数百人という規模ですので、卒業生ネットワークも含め、将来政策を作る際や国際交渉を行う上で役立つ幅広い人的ネットワークができるという利点があると思います。現に、ニュースを見ていても、ハーバード・ケネディスクールを卒業した政治家が国内外問わず多く出てきているように感じます。他方、小規模なスクール、例えばプリンストンウッドロー・ウィルソンスクールやジョージタウンの外交大学院のようなところで勉強すれば、一学年百人以下という規模なので、教授や他の学生たちと密にコミュニケーションが取れ、アメリカという文化にどっぷり浸かることができると思います。授業も当然少人数になるので、常に高い緊張感を維持して勉強することができると思いますし、英語力も否が応でも向上させられるのではないかと思います。個人的には、自分の能力不足を克服したいという想いの方が強いので、小規模なスクールでインテンシブに勉強する方が魅力的に映ります。


いずれにせよ、まだ留学に行けるかどうかも決まっていませんが、どこに留学に行くことになったとしても、帰国後にいかに公務に活かすか、行政官として高い付加価値を出せるかという視点が大事だと考えているので、その点を忘れないようにしたいと思います。


追記(1月1日):
何を勉強するかについて、ある人から有益なアドバイスを受けました。まず、MBAMPA・MPPでは、実際にはカリキュラムの多くが重複している(例:経済、金融、統計)とのこと。むしろ2つのプログラムの最大の違いは集まる学生の種類であって、MBAに集まる学生の大半は世界各国のビジネスマンで、逆にMPA・MPPに集まる学生の大半は世界各国の政府関係者であるとのことでした。そのため、帰国後もパブリックの分野でキャリアを歩むつもりならば、世界各国の政府関係者とネットワークが築けるMPA・MPPの方が望ましいのではないかとのことでした。また、ハーバード大やコロンビア大のようにMBAMPA・MPPの両方が置いてある大学では、ある程度自由に互いの授業を取れるため、その点を考慮しても、留学後のキャリアのためにどんなネットワークを築きたいか、どんな人たちに囲まれて勉強したいかを選定の基準にした方がいいとのアドバイスには納得がいきました。

出向の効用

現在、入省3年目にして、親元の省庁から外務省へと出向する機会を頂いています。おそらく期間は2年間。同期を見ても、我が省は3年目という若手のうちに内閣官房や他省庁にどんどん出向させています。初めは出向というとネガティブなイメージも持っていましたが、今はむしろ非常に自分の成長に役立っていると感じます。1点目に、出向先の組織の立場から政策を考える癖がつき、視野が大きく広がることです。私自身は、現在外務省に出向する中で、外交という観点から日本の政策を見る癖がつきました。領土問題をはじめとする東アジア外交・安全保障の問題についても身近に考えるようになりましたし、JICAの方々と一緒に仕事をする中で途上国への開発支援のあり方についても日々考えるようになりました。2点目に、逆説的ですが、親元の省庁の政策を真剣に勉強する良い機会になることです。出向先では親元の省庁からの出向者として国内の経済対策や産業政策、あるいはエネルギー政策について省庁を代表して意見を求められる立場にあるため、外交・経済の両面から政策を考える良い訓練になっていると感じます。
今、人事希望を提出する時期で、海外留学希望を含め、今後のキャリアプランについて考えなくてはならない時期にありますが、私自身は、親元の省庁における業務に加え、海外留学や国際機関・在外公館勤務、官邸勤務、民間企業出向等、異質な環境にあえて身を投じ、幅広い立場から政策に関与する経験を積極的に積んでいきたいと考えています。最終的には、そうした幅広い職務経験から得られた俯瞰的・国際的な視野から、我が国の国富増大・経済成長に寄与できる人材になりたいと考えています。

就職活動について思うこと

就職活動について、最近大学院の後輩と話す機会がありました。僕自身2年ちょっとの社会人経験しかなく、視野は非常に狭いですが、批判も覚悟の上で、就職活動に必要だと思う観点を何点か述べてみたいと思います。


○ 自分がより高く評価されている企業に行く。
これは意外と見落とされがちな視点ですが、大事なポイントだと思います。例えば僕の周囲を見渡すと、大学院の同期はもっぱら外資系コンサルや外資投資銀行、総合商社等に進みました。大学の学科の同期はデベロッパーや建設会社、役所、総合商社、コンサル等に進みました。そうした友人たちを見渡すと、その会社に高い位置で入社した(と思われる)人は、入ってからも面白い部署やポストにつけさせてもらっている印象があります。異動をする際も、自分の行きたい部署への異動希望を叶えてくれる可能性がより高くなるはずです。
例えば総合商社業界でトップの企業にボーダーぎりぎりで入社するのと、5位の企業にトップで入社するのでは、後者の方が、社内でプライオリティの高い面白い仕事に関われるかもしれません。総合商社であれば、1位でも5位でも、やれる仕事内容に大きな違いはないはずです。営業がやりたくて総合商社に入ったものの、希望が叶わずずっとバックオフィスにいなくてはならない、という状況になったとしたら、それは辛いことだと思います。
僕自身の体験を言うと、ちょうど今から3年前、学部時代からずっと行きたいと思っていた総合商社と、今の役所とで進路を悩みました。総合商社の方は、今思えばボーダーぎりぎりで内定をもらったように感じるし(実際内定の連絡が来るのが優秀な同期より遅かった)、同期のキャラクターも皆営業向けで社交性の抜群に高い人が多い中、僕はそこまでその輪に入りこむことができませんでした。一方、今の役所はありのままの姿の僕を受け入れてくれて、自然体で面接にも臨むことができ、そういう自分を高く評価してくれたように感じました。もし総合商社に自分を無理に納得させて入社していたとしたら、今頃どういうキャリアを歩んでいたかは分かりません。でも、きっと今の役所でやらせてもらっている仕事ほど、楽しく仕事をすることはできなかったかもしれません。(こればっかりは仮定の話なので分かりませんが・・・)
とりあえず、ここで言いたかったのは、自分をより必要としてくれる企業に入社するという視点が重要ではないかということです。


○ なるべく多くの進路を検討する。
僕は学部時代と大学院時代で二回就活をしました。学部時代は上手くいきませんでしたが、それでも総合商社やデベロッパー等幅広く企業を見ることができました。大学院でも総合商社や役所、金融機関、コンサル、メーカー等幅広くOB訪問や企業訪問をしました。それぞれの長所や短所を比較検討した結果、最終的には自分が一番面白いと思うフィールドを見つけることができたと思っています。
就職活動を控えている学生と話すと、どうも外資系コンサルや外資系金融等、いわゆる就職偏差値の高い、学生間で難関と言われているところに絞って就職活動をしている人が多いように感じました。世の中にはもっと面白い進路がたくさんあるはずです。社会起業のような形で起業するのも面白いし、NPONGOで働くのも面白いし、保険会社でクオンツのような仕事をするのも面白いし、博士課程まで進んで学問を究めるのも面白いと思います。
手前味噌になりますが、その魅力が十分に学生に理解されていないのが政府系の仕事だと思います。政府系の仕事には、社会的インパクトが大きく、クリエイティビティの塊のような仕事がたくさん眠っています。予算や法律、税制等、政策を作る過程はまさに創造性の塊ですし、常に新しいアイディアを出すことが求められています。資源外交や気候変動交渉等、日本を代表して国際交渉を行うのも、知的にエキサイティングな仕事だと思います。自分のした仕事が世の中に与える影響は大きく、責任とやりがいを伴います。その魅力と比べて優秀な学生の志望者はあまり多くなく、年々減ってきているため、若いうちからある程度大きな裁量を持たせてもらえます。もちろん政府の仕事への関わり方は様々あって、役所に入って当事者として政治のプロセスも含め政策を作り上げていくのも一つですし、JBICDBJに入って金融の観点から政策に関わるのも一つですし、シンクタンクに入ってアカデミックな観点から政策の分析・提案を行うのも一つです。
以上のように、特定の業種に初めから絞り込むことなく、もっと視野を広げて、様々な進路の可能性を考えることは、最終的に自分の決めた進路に納得するためにも必要なプロセスだと思います。


外資系企業の良さと悪さを知る。
就職活動生と話していて知りましたが、外資系企業の人気はいまだに非常に高いようです。外資系企業には魅力があるのは事実で、僕自身も就職したいという憧れを持った時期がありました。特に、若いうちからグローバルな環境で働けること、能力主義の人事で若いうちから活躍できること、給与が高いこと等が魅力でした。一方、負の側面もあることを忘れてはならないと思います。日本で外資系企業に就職することになった場合、働く会社はあくまで海外にある本社の支社という位置づけになると思います。よって、その経営は本社の意向に大きく左右され、本社が日本支社を撤退させる、あるいは縮小させるという判断を下した場合、その決定には従わざるを得ないでしょう。また、初めに外資系企業の支社に入ってから、本社の中枢部や経営層に入り込むのには、相当な努力と覚悟が必要だと思います。
もちろん、外資系企業への入社をあくまで長期的なキャリアのうちの一つのステップとして捉え、その後やりたい方向性が明確に定まっている、あるいは支社にとどまらず将来的に本社に転籍し、活躍する覚悟・自信があるというのであれば良いと思います。ただ、そうした覚悟・自信も、将来の方向性もないまま、成長できそうだから、給与が高いから、といったふわっとした理由で入社するのは危険だと思います。
例えば金融であれば、海外の本社の意向に左右されやすい外資系の金融機関に入社するよりは、経営基盤が安定している日本のメガバンクに入って、海外勤務も含めて長期的にじっくりと金融という仕事に携わる方が、キャリアを通じて面白い仕事ができるかもしれません。あくまで個人的な印象ですが、周囲の友人を見ていると、日本のメガバンクの方が外資系の金融機関よりも、国内営業や海外勤務、留学等、長期的な視点でしっかりと人材を育成している印象があります。
長くなりましたが、ここで言いたかったのは盲目的に「外資系企業>>日系企業」という構図を信じるのではなく、そのメリット・デメリットを比較した上で進路を決めるのがいいのではないかということです。

製造業について

4月21日号のトップ記事は、「製造業 第三の産業革命」という興味深い記事だったので、備忘録の意味も込めて、簡単に紹介したいと思います。
記事によれば、第一の産業革命は18世紀終期、イギリスの繊維産業における手作りから工場生産への転換、第二の産業革命は20世紀初期、アメリカの自動車産業におけるライン生産方式の導入による大量生産の実現であって、現在第三の産業革命が起きているとのことです。その内容は、製造のデジタル化と、それによる個別化・カスタマイズされた生産(mass customization)だと主張しています。具体的には、ユーザーの設計に基づき印刷したもの(インクの代わりにアルミ等の材料を使用)を、層状に積み上げていくことで立体的な製品を生産する「3次元印刷」や、ネット上のコミュニティからユーザーの嗜好やアイディアを集約し、それを最終製品へと作り上げていく「クラウドソーシング」が例として挙げられていました。
さらにEconomist誌は、そうした製造方法の革命は、製造メーカーの生産工場を中国等の新興国から先進国へと引き戻すだろうと予測しています。その理由として、(1)ユーザーの需要や嗜好の変化に素早く対応することが重要であること、(2)より洗練された製品を製造するためには、デザイナーやエンジニア、IT専門家、マーケティングスタッフが同じ場所で働くことが重要であること、(3)中国の賃金は年率20%で上昇していること、が挙げられていました。


ここからは私見です。日本の製造業への依存体質への批判を見ることがありますが、僕自身は、製造業は日本経済にとって極めて重要な産業だと考えています。理論的な武装は十分できていないのですが、大きく4つほどの理由があると思います。(1)製造業で作られる製品は世界中に輸出可能であり、経常収支の改善に寄与すること、(2)製造業は部品産業も含め波及効果が大きく、雇用の創出に寄与すること(自動車産業が良い例だと思います)、(3)製造業は多大な研究開発投資を行っており、イノベーションの源泉であること、(4)日本の強みを生かせる業であること(国内の大学や研究機関で行われている高いレベルの研究、日本人の繊細さや勤勉さといった特性、安全性や高品質等の日本ブランド)

僕自身は、今の役所に入った理由の一つに製造業の国際競争力強化に取り組みたいという思いがありました。実際、僕の周囲にいった工学部や農学部等の理系学部の優秀な学生のほとんどは、進路として製造業を選択せず、コンサルや金融、商社等の分野に進んでいて、製造業が優秀な学生にとって魅力的な進路でなくなっていることに危機感を覚えました。
幸運なことに、入省以来現在まで、製造業の振興を行う局で働かせてもらっています。もちろん、特定産業への補助金等の産業政策的な支援方法ではなく、EPA等の経済連携の推進による競争環境整備や、貿易保険や輸出金融といった側面的な金融支援等、様々な角度からの支援を考えていく必要があるかと思います。これからも、働く部署が変わったとしても、中長期的な視点でこのテーマは追い続けていきたいと思っています。

フランス大統領選について

3月31日号のEconomist誌のLeadersのトップに、フランス大統領選とフランスの経済状況に関する記事がありました。面白い内容だったので、少し紹介します。
記事は、フランスは経済状況が非常に悪化しているにも関わらず、どの政治家もその事実を無視し、真剣に取り組もうとしていないことを指摘しています。(事実、フランスの経済は財政赤字GDPの90%であり、公的支出もGDPの56%とユーロ圏で最大、また経常収支もユーロ圏で最も大きい数字となっています。)一方、記事によれば、フランスとは対照的に、ユーロ圏内の国々は、イタリアもスペインもギリシャも改革に向けた取り組みを積極的に行っています。
そんな中、4月22日にフランス大統領選が行われます。右寄りの現政権のサルコジ大統領が再選するか、左寄りの社会党のオランド候補が当選するか、世界的に注目がされていますが、本記事では、どちらが大統領に選ばれようとも、投資マネーはフランスの国債市場から逃避するだろうと、かなり悲観的な見方をしています。具体的には、オランド候補は6万人の教師職の新設、富裕層に対する75%の所得税の課税、年金の受給年齢を現在の62歳から60歳への引き下げるといった政策を掲げていますが、これはフランスの財政状況を悪化させ、富裕層をフランス国外へ逃避させることにつながりますし、サルコジが再選されても、フランスの財政支出を抑制する大胆な改革に着手することはできないとしています。


個人的には、フランス大統領選の結果は、日本にも大きな影響を与えるだろうと考えています。1点目は経済・金融市場への影響です。大統領選の結果を投資家がネガティブにとらえ、その結果ユーロ圏で第2位の経済大国であるフランスの金融市場から投資マネーが逃避し、フランス国債の利回りが上昇するようなことがあれば、一旦沈静化したと思われたユーロ危機が再燃しかねません。そうした事態に陥れば、ユーロ圏への経済依存度の強い中国等はもちろんのこと、当然日本にも大きな影響を与えると思います。
2点目はエネルギー政策への影響です。サルコジ大統領は原子力に対して前向きですが、オランド候補は電力の原子力依存率を現在の75%から50%に引き下げることを明言しています。日本は今後の中長期的な新しいエネルギー計画を策定している最中ですので、世界でも有数の原子力大国であるフランスが原子力政策を転換した場合、日本の計画策定にも大きな影響を与えると考えています。
引き続き、フランス大統領選の行方には注目していきたいと思います。